子どもや孫に迷惑をかけないための「墓じまい」
 

こんにちは、今回は、昨今FP相談において増えている「墓じまい」についてのお話しになります。

近年、少子高齢化や核家族化による管理者不足といった理由などから「墓じまい」についての相談が増えています。
そこで、墓じまいにかかる「手続き」や「費用」、「注意すべきトラブルとその対策」について見ていきたいと思います。

◆墓じまいが増加している背景◆

墓じまいの増加は「少子高齢化や核家族化による管理者不足」以外にも、管理者の身体的・精神的・経済的負担が要因として挙げられます。
また、私もそうですが、実家がある田舎には家族の誰も暮らさなくなり、物理的な維持が難しいと云った事情も少なくないようです。

年数回のお墓参りだとしても、お墓が遠方にあったり、高齢・多忙などといった管理者の状況によっては、その身体的負担は決して小さくありません。
加えて、代々受け継いだお寺との関係性によっては、檀家問題(お墓の維持管理・お布施問題)などの精神的・経済的負担がのしかかります。

これらの負担を考えると、将来、子どもや孫に同じ負担を背負わせるのはどうなんだろうと悩むのもうなずけます。

◆墓じまいの手続き◆

墓じまいとは「墓を撤去し、その使用権を管理者に返却すること」を意味しますが、墓から出した遺骨は、その後、何らかの形で供養する必要があり、永代供養や散骨といったその後の選択も含め「墓じまい」ということが一般的です。
墓じまいには諸々の手続きが必要となりますが、遺骨取り出し後に永代供養をする場合の流れにつきましては下記のようになります。

(1)現在のお墓の墓地管理者(寺や霊園など)に「墓じまい」の旨を報告する

報告の仕方には注意が必要です。特に、長年お世話になってきたお寺の場合には、義理を欠く態度を取ると、感情がこじれて高額なお布施(離檀料)を請求されたりします。
墓じまいの理由や事情についても、丁寧に説明しましょう。

(2)改葬先から「受入証明書」を発行してもらう

(3)現在のお墓の墓地管理者(寺や霊園など)に「埋葬証明書」を発行してもらう

(4)現在のお墓の所在となる自治体(市町村)から「改葬許可証」を発行してもらう

申請の際には、先に入手している「受入証明書」「埋葬証明書」が必要になります。
※自治体からの「改葬許可証」がなければ、お墓から遺骨を取り出すことはできません。

改葬許可証を入手して、ようやくお墓の撤去・遺骨取り出し作業に取り掛かることができます。
なお、撤去の段取り・費用等は墓地管理者によって異なりますので、指示に従いトラブルのないよう心がけましょう。

最後に、取り出し遺骨を改葬先に納骨して、墓じまいは完了となります。

◆墓じまいにかかる費用◆

墓じまいにかかる主な費用としては、一般的には30万~300万円程度といわれており、内訳は下記を参照ください。

【墓じまいにかかる費用の内訳】

※散骨や手元供養(ペンダントなど)にする場合は、1万~50万円程度

上記の通り、墓の撤去のみであれば10万~30万円程度と、さほど大きな差とはなりません。

墓じまいの費用については、墓を撤去した後や遺骨を取り出した後どうするかによって費用が大きく変わってきます。

改葬先では、永代供養を選択するケースが多いと思われますが、合祀墓か個別納骨かによって費用は大きくことなりますし、
そもそも改葬先の寺院・霊園などのグレードによっても違いがあります。
近年では、建物内に納骨・参拝スペースを設置し、納骨の管理・供養を行う納骨堂や、墓石の代わりに樹木や草花を植えて、
その周囲に遺骨を埋葬する樹木葬も人気で、墓じまいにかかる費用はますます多様化しています。

いざという時に想定外の費用が発生しないように、まずは希望する改葬内容、特に改葬先での総費用をざっくりと見積っておくことが大切です。

◆墓じまいに関するトラブルとその対策◆

墓じまいで想定されるトラブルの相手としては、大きく分けて、親族・お寺・改葬先が考えられます。

(1)親族

墓に対する思いやお寺との関係性は、親族間でも大きく異なります。
そのため、墓じまいをするかどうか、まずは親族間でしっかり同意を得る必要があります。

また、墓じまいをするという方向性で同意を得ても、その後、親族間での意志確認をしておかないと、ある程度墓じまいが進んでから
「合祀墓にするのか、個別納骨にするのか」「永代供養費は誰が負担するのか」といったところでもめごとになることもあります。

墓じまいの手続きに入る前や墓地管理者に報告をする前に、そのあたりについて親族間できちんと話し合いをしておきましょう。

(2)お寺(現在のお墓の墓地管理者)

前述のとおり、現在のお墓の墓地管理者がお寺の場合、感情がこじれて法外なお布施(離檀料)を請求されるというトラブルも珍しくありません。
そんなトラブル防止のためにも、墓じまいの理由・事情について丁寧な説明が大切です。

また、墓の撤去について、墓地管理者指定の石材店にしか発注できないケースも少なくありません。

その場合は、業者が指定されている以上、基本的にはその条件を飲むしかありません。
事前にその指定業者の費用を確認しておくことが、せめてもの対策と云えます。

(3)改葬先(永代供養先)

永代供養については、最初に永代供養料を支払うことで、その後の費用は発生しないのが一般的です。

しかし、墓地管理者によっては、別途、年会費や管理費、お布施などがかかるケースもあるので、事前にしっかり確認しておきましょう。

さらに、供養方法や参拝ルールなどについての誤解から、トラブルに繋がることも考えられます。

例えば、合祀墓の場合には、遺骨は二度と取り出すことはできないので、分骨や改葬が行えなくなることも、事前に知っておかないと大きなトラブルに繋がりかねません。

もっとも、これらについては、事前にしっかり資料などを確認しておくことで防げるものです。

資料などを見てもよくわからなければ、納得いくまで質問をしてから契約するようにしましょう。

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