こんにちは、今回は「株式の相続」についての相談事例をご紹介します。
◆ご相談内容◆
・夫である甲が先日死亡
・甲はA株式会社(以下、A社)の代表取締役兼A社株式を100%保有している株主
・相続人は妻である私(乙)と長男の丙のみ
・丙を後継者としてA社の代表取締役に選任したいと考えている
・甲はA社の唯一の取締役
・遺言はなく、遺産分割協議も済んでいない
◆詳細解説◆
まず、乙と丙で協議し、A社株式の権利行使者一人を定め、会社に通知します(会社法106条)。その後、権利行使者が株主総会に出席し、丙を取締役に選任します。
1.権利行使者について
甲が死亡し、A社株式が相続人乙と丙に相続された場合、当然に法定相続分の割合で相続されるのではなく、準共有状態となります。
準共有状態の場合、株式の権利行使者を一人定めて、株式会社へその者の氏名又は名称を通知しなければ、当該株式の権利行使ができないとされています。
従いまして、ご相談のケースでは乙と丙の協議のもと、権利行使者一人を定めて会社へ通知する必要があります。また、権利行使者の指定は共有物の管理に該当するとされているため、持分価格の過半数をもって決するとされています。
よって、乙と丙どちらか一方の独断で権利行使者を指定し会社へ通知することはできませんのでご留意ください。
遺産分割協議が完了しましたら、別途、株式の名義書換が必要になってきますので、忘れないようにご対応ください。
2.株主総会の招集手続きを経ていない株主総会の開催について
ご相談のケースでは、甲が唯一の取締役であるため、株主総会の招集決定及び株主総会の招集通知を行うことができません。
この場合、株主総会の有効性に疑義が生じますが、判例の考え方として、株主総会の招集手続きを欠く場合であっても、株主全員がその開催に同意して出席した株主総会は有効に成立するとされています(最判昭和60年12月20日)。
ご不明点等お気軽にご相談ください。