こんにちは、今回は「賃貸経営におけるサブリース」について、事例を用いてお話し致します。
サブリースに関しましては、サブリース業者に対する訴訟件数が激増していることや、サブリース業者の悪質さが目に余るなどの背景から、賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(令和2年法律第60号)が全面施行され、賃貸住宅管理戸数(自己所有物件の管理除く)200戸以上の賃貸住宅管理業者は、賃貸管理業登録が義務付けられました。
◆相談内容◆
・相続対策を兼ねた土地活用として、遊休地にアパートを建築する予定
・アパート経営は今回が初めてであり、安定性を重視し、サブリース契約を締結したい
・何か注意することはありますでしょうか
◆詳細解説◆
先ず始めに、サブリース契約を締結する場合には、契約期間中や契約更新の際に賃料が減額される可能性があること、契約更新拒絶又は中途解約される可能性があることにご注意ください。
そもそものお話しになりますが、事業経営の安定のためにサブリースを選択する必要はありません。
1.賃貸借契約とサブリース契約の違い
2つの契約の大きな違いは、建物所有者から見た賃借人が違う点です。そのため、賃料が手元に届くまでの流れも異なります。
このようにサブリース契約は、「転貸借契約」と「家賃保証」の2つを組み合わせた契約形態といえます。
2.サブリース契約の注意点
サブリース契約を検討される際には、以下の事項に留意する必要があります。
(1)契約期間中や契約更新の際に賃料が減額される可能性がある
賃借人であるサブリース業者は、借地借家法第32条の規定により、賃料の減額請求ができます。
ただし、国土交通省の標準契約約款によると、下記のいずれかに該当する場合に、建物所有者に対して減額請求をすることができるものとされており、たとえばサブリース業者の業績悪化や、空室の増加のみを理由とした減額請求はできないものとされています。
①土地又は建物に対する租税その他の負担の増減により不相当となったとき
②土地又は建物の価格の上昇又は低下その他の経済事情の変動により不相当となったとき
③近傍同種の建物の賃料に比較して不相当となったとき
賃貸人の立場としては、その請求を受け入れなければならないわけではありませんので、必ずしも減額になるとは限りませんが、当初の賃料が契約期間満了まで保証されるものではないことに、留意しておく必要があります。
(2)サブリース業者から解約される可能性がある
サブリース業者は賃借人であり、一般の賃貸借契約と同様に、契約更新を拒絶することができます。また、賃貸借契約にて解約予告が定められている場合、サブリース業者は、その規定に基づき契約期間中に解約(中途解約)することもできます。
他方、賃貸人である建物所有者が契約更新を拒絶する場合、借地借家法第28条に規定する正当事由が必要となります。
したがって、建物所有者は、自己都合により契約更新を拒絶することは難しい一方で、サブリース業者から契約更新の拒絶、又は中途解約される可能性があることに留意しておく必要があります。
(3)サブリース業者から賃貸人(オーナー)への賃料支払いにおける免責期間がある
賃貸借契約開始時や契約更新時において、必ずと云って良い程、賃料支払いにおける免責期間が設定されています。業者により期間の差はありますが、酷いケースでは、6カ月という長期間の免責期間が設定されていたりします。この期間、オーナーへは1円も収入が入らないにも関わらず、銀行へのローン返済等の支払は当然始まっていますので、全て手出しとなってしまいます。また、転借人からの更新料は全てサブリース業者に入ることや、家賃が低めに設定されがちなど、要注意事項ばかりです。
サブリースは「賃料の保証」ではなく「入居率の保証」であり、その入居率を確保するための賃料設定はサブリース業者側にあるのです。
以上の留意点を考慮したうえで、サブリース契約の締結についてご検討いただくことをお勧めしますが、弊社では、オーナー様に利点が少ないことからサブリースはお勧めしておりません。
サブリースについて、ご不明点等ございましたらお気軽にご相談ください。